学校立ち上げストーリー
2020.08.06
学校立ち上げストーリー
学校立ち上げストーリー
この記事では、子どもが教える学校の立ち上げまでのストーリーを主宰の鈴木がご紹介します。
◆先の見えなかったコロナ休校中、一人の少年に勇気をもらった
子どもが教える学校は、2020年春のコロナ休校中に子ども達のために何かできないかと、自身も小学生の母である主宰の私が突如立ち上げたプロジェクトです。
知人との会話も、テレビ番組もすべてがコロナ一色に染まり、生活スタイルも大きく変わることを余儀なくされ、世の中全体が不安に満ちていたあの時期の事です。休校中の有り余る時間を自宅で手持ち無沙汰に過ごしている、小2のわが子を見ながら、この私でも何かできることはないかな、そんな風に日々思いながら過ごしていました。
生まれて初めてのお花見のない春でした
特に、元気の有り余っている子ども達と、先行きの見えない時代に鬱々としている大人たちのコントラストが私にはとっても印象的に見えました。元気な子ども達と、元気を失いつつある大人を「つなぐ」ことで何かできないかな、そう思っていた時、SNSである一人の少年が目に留まりました。
小学校6年生のある男の子が、中学受験で身に着けた「時間管理のスキル」を小学生の子ども達にオンラインで伝える講座をしている姿でした。休校で偶然にも手に入った僕たちの自宅時間、せっかくなら自分でスケジューリングして計画的に過ごそう!という強いメッセージを込めたものでした。
自粛生活を余儀なくされる中での、自分が出来ることを行動に移す勇気。
その姿に、大いに刺激を受けました。休校中で時間もパワーも有り余っている子ども達に向けて、長年の企業での企画職時代に培った「プレゼンテーション」のスキルなら私にも教えられるかもしれない、そんな思いつきから子どもが教える学校の最初の一歩は踏み出されたのです。
◆みんな、子ども先生やろうよ!
オンラインで手軽に受けられることもあり、プレゼンテーションの講座には、毎回30組~50組の子ども達が参加してくれました。伝えるって楽しいよ、伝えるっていろんな可能性に満ちているよ、私がこれまでの社会人経験で感じるプレゼンテーションの魅力を子ども達に全力で伝えました。
各自が自宅から参加する講座
講座の中で、伝えることの面白さに次々と目覚め始めた子ども達を見て、せっかくなら彼らに発表をする機会を作ってあげたいな、そんな風に思い始めます。
「そうだ!」「元気な子ども達の授業を、元気を無くしかけている大人に届ければいいんだ」「子どもが教える学校というネーミングで行こう!」
そんな私の思いやアイデアを、子ども達にプレゼンテーションしたところ、5名の子ども達が子ども先生にエントリーしてくれました。
授業のテーマは、何でもいいよ、好きなこと、伝えたいこと、いつも考えていること!そう伝えると子ども達は嬉々とした表情で「やりたい!」と答えました。
そうやって、子どもが教える学校は正式に発足。本番に向けて子ども達と一緒に授業を作り上げていく最初の1ヶ月がスタートしたのです。
◆子ども達との「人対人」の関わり時間
子ども達との1ヶ月間は、本当にエキサイティングな時間でした。「なんで大人はやりたくない仕事をやめないの?」「学校でいじめがなくならないのはこんな理由からじゃない」子ども達から真っ直ぐに発される言葉は、純度に満ちていて、私の常識の斜め上の視点からのものばかりです。
そうかぁ、そういう視点もあるのね、なるほど!
子ども達に何かを教えというスタンスは一切取り払い、子ども達の「内側」に持っているものを対話で引き出し、それを何より一緒に面白がっていく、そういう向き合い方で授業を作り上げていきました。
これは私が会社員時代、企画職としてクライアントの課題やニーズを長年聞き出してきたキャリアや、4年前に独立起業してから事業をされている事業主の方の思いやアイデアを「ヒモ解き」という屋号で整理している今の生業が本当に役に立ちました。
また、相手が子ども達であっても、そこは今までのビジネス同様、フラットに人対人の関わりで向き合うほど、多くの思いを引き出せることも知りました。
◆子どもだからこそのメッセージ
そうやって迎えた子ども先生の授業本番当日。
最初の第1回目の子ども先生たちの授業です
50人の大人の方がZOOM越しに参加くださいました。私は絶対子ども達の授業は「大人の方の心に必ず刺さる!!」と確信していました。
それは7年間のわが子の子育ての中で、裏付けされた自信でした。
「お母さん、できないと思うからできないんだよ」「心の中には、幸せだなって思う事だけいれればいいんだよ」
これは就学前の息子が私にかけてくれた言葉のごく一部です。わが子が特別なのではなく、子ども達の視点はいつも世の中をフラットに捉えています、そしてそれは大人たちに大きな気づきをくれる、私にはその確信がありました。きっと元気をなくしている大人たちをエンパワメントする時間になるに違いないと。
大勢の人の前で自分の主張を堂々と話す子ども達。その姿を見て、思わず笑みがこぼれる人、涙を流す人、幼い頃の思い出がよみがえる人、大人になっていろんな枠の中で生きていた自分の不自由さに気がつく人が現れました。ZOOMのチャットは、ご参加者の温かい心からの気づきや応援のメッセージで埋まりました。生徒として参加した大人たちがたくさん心動き、熱を帯び、元気になる授業がここに誕生したのです。しかもオンラインで。日本だけじゃなく、世界全体が人とのつながりに飢えていたそんな時、大人と子ども、住む場所もバックグラウンドも違うもの同志が、画面越しに短い時間でもつながれる。私自身、人と人とのつながりの新たな可能性に心から驚き、感動したのです。
◆子どもたちからあふれ出す自信
一方、授業を終えた子ども達は?
3週間の準備を終え、見事に授業を終えた子ども達の表情は本当に晴れ晴れしていました。どの子も終わった瞬間に「もう一度やりたい!」と口々に言いました。
きっとそう思うはずです。だって、いつもは学校の先生の授業を「聞く側」の自分が、大勢の大人たちへ「話す側」に回った初めての経験なのですから。しかも、ただ聞くだけではなく、みんな真剣にメモを取りながら、心振るわせ聞いてくれる。自分の伝えるメッセージがこんなにも人に「影響」を与えることを知った経験になったはずです。
しかも、誰に強いられるのでもない、自分が選んだテーマで。そのことがより一層、内側から溢れる自信につながっていきました。
そして、自分だけのテーマを自分の言葉で語ることを知った子ども達は、隣にいる友達にも同じように「自分だけのテーマ」があることを肌で知ったはずです。真剣に熱く自分のテーマについて語るお友達の姿を、誰一人茶化すことなく、自分のテーマと同じように互いに尊重し、耳を傾け合う。
みんなこの場を「温かい場」「自分でいられる場」と表現してくれる、そんな自分のままでいられる場が3週間の中で育まれたのです。
◆つなぎなおす活動
この子どもが教える学校は、2つの顔を持っています。
1つは、子ども達のための場です。伝えることを通じて取り組む「自己探求」の場です。
もう1つは、大人のための場です。自分とは違う子ども達とのコミュニケーションを通して「自己対峙」する場です。
このどちらかの顔が欠けても、この学校は成り立ちません。話を話す人と聞く人がいるから会話が成り立つように、授業を伝える人と受ける人がいるからこの場は成り立ちます。そして、それは親が子どもがいるから親でいられるように、上司が部下がいるから上司でいるように、そこには上下関係など本来なく、それぞれの人たちは誰かがいるから成り立っている、と同時に、誰かが成り立つことに誰もが寄与しているのだと強く感じました。
そして、大人と子どもを「つなぎなおそう」と強く思ったのです。
コロナ禍の大きな生活の変化で、元気の有り余っている子ども達と、元気を失いつつある大人達をつなぎなおすことがこの場の価値なんじゃないかと。自粛生活であらゆる人と人の物理的なつながりが断絶を余儀なくされる中、オンラインという形ではあるけれども、新しいつながりを作ることができると、強く感じたのです。
ある日の息子との一コマです
「つなぎなおし」
これがプロジェクトの裏テーマです。心の中でそう唱えながら、コロナ自粛中の不便極まりなかった時期、私はSNS上に子どもが教える学校の価値と、子ども達が持つメッセージのパワフルさを連日投稿し続けました。
◆育児・教育に無関心な私が私が夢中になった理由
私はもともと、教育熱心な親ではありません。育児にも情熱を注いでいる方では決してありません。(公園に連れて行ったことも実は数えるほどしかないそんな親です)
ですが、普段は対局にいる大人と子ども、この両者がつながることで双方に起こる「想定外のイノベーション」に、心から夢中になりました。しかも、何か難しいテクニックを使ったわけではありません。やったことはたったひとつ!
「大人が教える→→子どもが教わる」
この発想を180度回転させただけです。
「大人が教わる←←子どもが教える」
お互いの役割を一時的にチェンジしただけです。それだけで、こんなにも多くの気づきや感動が生まれることに、私自身が感動しました。日々、その感動をSNSにつづりました。この感動を多くの方にぜひ体感して欲しいと、連日発信を続けました。
これはある日の投稿 お会いしたことない方含めシェア80名!
◆熱の連鎖が連れて行ってくれた世界
その発信に共感し、手伝ってくれる方が現れました、シェアくださる方は100名近くにまでのぼり、その一部がマスコミの方の目に留まり、立ち上げ1ヶ月足らずのプロジェクトはTV局2社・新聞社1紙に掲載、子どもが教える学校はありがたいことに多くの方に知っていただくことになるのです。
これは、子ども達を取り巻く大人がみんな「情熱」を帯び見せてくれた世界でした。私一人では絶対になしえなかった世界に、それをつながりの中での熱の連鎖が連れて行ってくれました。
その後、子ども達は通常どおり学校に通えるようになりましたが、これだけ共感していただく人がいらっしゃるプロジェクトは、絶対続けるべきだと熱い使命感に燃え、毎月1回コンスタントに開催をしています。プロジェクト発足から3ヶ月の間に子ども先生は50名、授業参加者は1000組にのぼる大きなプロジェクトへと成長しました。
◆子ども先生達にたった一つ伝えていたこと
たった数ヶ月で大きく予想以上に育ったプロジェクト。その中で、私は子ども達に、授業をする上で絶対に外してはならない「たった一つの大事なこと」を伝えています。
巷には、伝えるためやプレゼンテーションのためのテクニックや技術はあふれています。でも、何よりも大事なのは「伝えたい思い」です。
青臭いかもしれない、だけど、最後に相手を動かすのは気持ちだよ。そんな風に子ども達に伝えていました。
そして奇しくも、今回の数カ月のプロジェクトの成長で私自身が「伝えたい思いの持つ力」を誰よりも実感することになるのです。決して教育者でもない、教育においては素人である私が、コロナ休校中という不自由な時期に、プロジェクトを予想以上に大きく出来たのは、「伝えたい思いの力」でした。
伝えたいという思い、伝えたいと思うからこそ生まれる創意工夫、それこそが人の心を動かし、大きな波紋を生んでいくのだと私が今回の事で一番学んだのです。
子ども達に伝えていることは、私自身のメッセージとしていつも戻ってきます。子ども達の挑戦は、私自身の挑戦の背中を押すことにつながっています。そして、その逆もまた然りだと思うのです。
私、そしてこのプロジェクトに関わる仲間たちは、みんな子ども達を子どもだからと区別することなく、本当に今の同じ時代を一緒にサバイブする仲間だと捉えています。そうやって捉えたほうが、毎日は断然面白いし、彼らからたくさんのことを気づき学ぶことができるからです。
◆すべての原点は1枚の企画書だった
最後に、このプロジェクトのひとつの原点をご紹介し、立ち上げストーリーを締めくくりたいと思います。
コロナ禍に突如立ち上がったプロジェクト。予想以上のミラクル。
でも、実はその原点は2年前にすでにあります。
私自身が子育てする中で心を奪われた「子どもの面白い視点」。それを授業にしたら、きっと興味深いイベントになるはずと「子どもが教える学校」の構想自体は、企画書に落としていました。
実際の企画書の冒頭部分です
今、振り返ると予言者じゃないかというくらい、今の企画そのものですが、当時の私は企画書に落とし、興味を持ってくれそうな仲のいい数人に見せただけで、あとはPCのフォルダに格納されたままになっていました。
でもきっと、この時の企画書がなければ、この時に思いを小さくても形にしていなかったら、この学校の立ち上げをこんなに短い間でこなすことはできなかったなと、自らを振り返ります。
私自身、自分の夢を茶化すことなく、提案書という形に落とし込んでいたことで、2年越しに夢を叶えることもできました。しかも、思った以上にびっくりなストーリーで。
だから、子ども達にも言うのです。自分の思いを外に出してみよう、アイデアや夢を語ろう。そして、それはここに関わる大人のみなさんにも同じように伝えたいメッセージです。
子どもが教える学校は、ここに関わるすべての人の夢が叶う場所、そんな場所でありたいなと強く感じています。だからこそ、このプロジェクト自身が、新分野や新しい方との関わりなどのなかで、どんどん夢を叶えていく予定です。
子どもが教える学校のストーリーはまだ始まったばかりです。次のストーリーをみなさんにご紹介出来る時をどうぞ楽しみにしていてくださいね。そしてぜひ、学校に遊びに来て、みなさんの夢の話も聞かせてください。
子どもが教える学校 主宰/校長 鈴木深雪
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